・うたたね---rude・
先に風呂を使わせてもらったレノが部屋に戻ってきてみると、ソファの上のルードは静かに寝息を立てているところだった。
腕を組んで深くソファに腰掛けて、一見して眠っているようには見えないその姿に、レノはさてどうしてくれようかと思案する。
ほっぺたを摘んでみようか、それとも耳を引っ張ってやろうか。
「ルードー?」
話しかけてみても起きる気配は欠片もない。いつもならこんな風にレノがごそごそとちょっかいを出そうとしているところで大抵目を覚まされてしまう。
そもそもルードがうたたねをすること自体が滅多に無いことなのだ。そしてそれがレノの見つめている目の前で、となると更にその機会は減る。つまり今のこの状況はレノにとって非常に珍しいことだったりもする。
うーん、とレノは腕を組み、思案する。起こしてしまうのは簡単だ。ルードに悪戯をしかけるのもいつものこと。ならば。
レノは正面からかけられたままだったルードのサングラスをそっと、慎重な手つきで外してローテーブルの上に置くと、ルードの隣に腰掛けた。
じっと眠るその横顔を見つめる。あ、そうそう、こいつ意外と睫毛長いんだよな、と。普段は隠されていることの多いそれを確認して、笑みを浮かべる。
ルードのことなら何でも知っている、そうは言えないかもしれない。けれど今この瞬間の、無防備なルードの眠る顔を知るのは自分だけだという優越がレノを得意にさせる。こんな表情で眠るルードを知るのは自分だけだと思っていられるささやかな幸福感。愉悦。
「……レノ?」
ほんの僅かにルードの睫毛が震えて瞼がゆっくりと開かれた。やがて寄せられる視線に気がついたのか、レノの方を軽い驚きと共に見つめてくるルードに、レノは少し残念な気がした。
「あーあ、もう起きちまった」
「どう…した?」
「風呂、上がったからな、と」
「ん…あぁ…」
すっと立ち上がって去っていくレノは一人、もーちょっと見てたかったぞ、と、と呟いた。
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